「ウエストコート」 レイプシードのウエストコート



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「ウエストコート」
title copyright 2017 MOMOTOSEDO, Ryuichi.Hanakawa.
レイプシード(菜種色)のウエストコート

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「ウエスコート」は米語では「v」の発音が面倒な「vest」、仏語では響きも洒落た「ジレ」、日本語ではシンプルに「直着」を由来とする「チョッキ」と呼ばれる、がしかし、このクラシックなワードローブは正しく「Waistcoat」でなくてはならない。



何故なら「Waistcoat」はテイルコート同様、「ウエスト(Waist)位置」で切られた「コート(Coat=ジャケット)」であるからだ。(かつては袖がついていた。)


クラシックなウエストコートは冬の寒さを少しでも防ごうという英国人のケチな考えで発案されたものでも、俗説の上着とズボンを仕立てて残った生地を無駄(Waist)にしないために生まれたものでもない。

これこそはメンズドレススーツの「センターピース」であり、ダンデイズムの象徴である。 かつてはウエストコートなしのスーツ姿など考えられなかった。「シャツ」は「下着」だったのだからウエストコートなしのスーツ姿は下着姿で人前にでることと同様だったのだ。



それゆえに仕立ても上着にまけぬほど精巧な「Coat(ジャケット」でなければならない。ただおざなりのぺったりと「平面的」なウエストコートほどみすぼらしく無知を晒すものはない。



私のビスポーク遍歴でも不満のひとつだったのが「ウエストコート」の仕立てであった。
アトリエの「ウエストコート」は袖のない「ジャケット」として仕立てられる、からだに添った立体的な表情に精緻に仕立て上げられる。

ラペルにもヴィンテージのアルパカで制作した特別な芯が仕込んであり、ふわりとエレガントなふくらみをもって翻る。

ラペルの端には指で触ると「ツブツブ」とした「立体」であるのがわかる特別な仕様の細かな「ハンドステッチ」がはいっている。
たいがいはスーツに溶け込む同系色の糸で縫われるので目立たないのだが、、、

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■「レイプシード」のウエストコート」■


ウエストコートはスーツと共地で仕立るのが原則だが、特例の「独立した存在」ともいえる「ウエストコート」がいくつかある。


そのひとつがこの「レイプシード(菜種色)」のハンテイングウエストコートである。


英国の田園には5月ごろになる と突然、眼にも鮮やかなイエローゴールドの四角形がそこかしこに出現する。見慣れないものは田園の緑との強烈な対比に驚くが、これが「レイプシード」の花である。

このハーヴェストゴールドのウエストコートはその田園の「レイプシード」の色に由来している。

英国ではこの「レイプシード」のウエストコートは何にでも合わせる、ツイードであれ、プリンス オブ ウエールズであれ、ネイヴィージャケットであれ、、、これは「万能の」ウエストコートなのである。





「ウエストコート」 レイプシードのウエストコート_b0151357_11145716.jpgそして、この「レイプシード ウエストコート」には「これでなくてはならない」という専用の生地がある。産毛のような細い毛をぎっちりと密に織った、しかしワタアメのようにふわふわとした手触りの生地なのだが、コレがいまや手に入らない。だから、「レイプシード」のウエストコートの本物を着ている人は稀である。困った時代になったものだ。ちなみに「本物」はウエストコートの裏地がコットン&ウールのタッターソールである。これは1980年代にラヴァットミルに出かけ特別に織ったものだ、だから糸も極上のものを選んでいる。まだ、あの頃は原糸の良いものがいくつか保存されていた。ウールの原糸は羊から刈り取ってすぐには使えない。最低でも5~6年は寝かさなければいけない。この糸は染めてからずいぶん経って良い色になっていた、多分、1950年代のものだったように思う。














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「プリンス オブ ウエールズ」の三つ揃いはいかなるときにも新鮮な美しさと品格を保ち続ける。これ一着あれば、たとえチャールズ皇太子のプライヴェートパーテイに運よく招待されたとしても、或いはレデイガガのミッドナイトバースデイによばれたとしても困ることはない。ただ「プリンス オブ ウエールズ」には個体差がある。この「プリンス オブ ウエールズ」は私が英国で織ったものだ。






















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「ティラー六義」

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# by tailorrikughi | 2017-04-11 10:45 | 24.「レイプシード ウエストコート」