The Collection / 2. Overcoating


TAILOR CLASSIC

The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_1762518.jpg
 
「ムーアハウス ブルック」
失われたミルを探して



「ムーアーハウス & ブルック」は、英国、ヨークシャーにあったオーバーコート地専門のミルです。残念ながら、すでに、廃業しています。このミルの名を、日本で知る人は少ないのではないでしょうか、私も偶然、このミルの生地に出会うまでは知りませんでした。

偶然、みつけた生地が、あまりにも本格的で夢中になり、このミルの生地を探し回ることになったのです。英国の本格的なコート地というのは、日本の感覚とは全く違います。言い換えれば、日本には、カシミア以外、本格的なコート地は無いといっても良いぐらいです。
先ず、その厚さ、重さが違います。下手をすると1メーター800gくらいある生地は、ざらとはいえませんが普通にあります。英国の昔は、本当に寒かったのです。そして柄です。1930年代のエスクワイアに登場するイラストでしかお目にかかれなかった柄が実物としてあるのです。

「ムーアハウス」のチンチラを混ぜたピユアカシミアや、キャメル100%の極端な質の良さも述べたいところですが、その生地の素晴らしさは普通のウール地にあります。糸が良いのか、質が際立って良いことがシロウトでも分かります。

カシミアを混ぜるとか、スーパー200`sとか、そういう次元ではなく「良いウール」なのです。他のコート地とは明らかに違う独特な光沢と表情があります。






The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_1773625.jpgムーアハウス & ブルック
「ネイビー チョークストライプ」


最初に見つけたのがこの生地で、やられました。
当時、ネイビーのチョークストライプのダブルブレストのチェスターフィールドコートをつくろうと思って生地を探し回っていたのですが、ロンドンでも、あるにはあるのですがどうも納得できないまま、ヨークシャアの生地問屋にカシミアとキャメルヘアーの良いのがあると聞いて、とりあえず、その生地問屋へ出向いたのです。
見せてもらった、トップグレイのチンチラとカシミアの生地が素晴らしく、それ以上にキャメルヘアーの質の良さには驚きました。(これは、後ほど紹介します、)それで、これはどこのミルのものかと聞いたところ、ムーアハウスという今はなくなったコート地専門のミルだけど、他にもカシミアじゃないけど持ってるよ、といわれて出てきたのが、このネイビーチョークストライプです。
完璧なクラッシックです。生地の厚み、目の詰まり方、何より糸が良いのがわかります。良いものを見ると違いが分かるといいますが、その通りで、いまの生地、イタリアのものなどが、いかに嘘っぽいかが分かります。








The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_1782385.jpgムーアハウス & ブルック
「変わり格子」


この柄を正式には何と呼ぶのかは聞き忘れましたが、チャコールにホワイトの変わり格子の、このデザインと、そのヌメリとした生地そのもののクオリテイーの高さで、ムーアハウスのデザインがいかに本格でミルとしての奥深い実力を持っていたかを窺い知れます。

変わったデザインではあるのですが、不思議に30年代を思わせるクラッシックなのです。

上の文句のつけようのないチョークストライプのあり方もそうですが、その実力が本物なので、大胆なデザインをしてもクラッシックを感じさせるのです。














The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_1794571.jpgムーアハウス & ブルック
「オルタネイト ビンテージストライプ」


これも渋い、味わい深いビンテージストライプです。生地の量感もこのビンテージストライプにあっています。実際にこれでコートを仕上げたときを想像するのも愉しくなります、実に本格的な味のある姿になると思います。

















The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_179762.jpgムーアハウス & ブルック
「ビンテージ ハウンドツースチェック」


この生地は毛足が長く仕上げられています。それが、この生地の特徴であり、魅力です。そのせいで、濡れたようにしっとりとした質感があり、ラグジュエリー感を醸し出しています。デザインは、ハウンドツースを色違いで配して、オーバープレイドに見せる、いかにも英国的なものです。
ムーアーハウスのコート地は、オーバーコートという量感のある姿に仕立てたときの、デイグニテイーとかクラッシックさとかを計算しつくしているように思います。それがコート地を専門にしてきたミルの実力だと思うのですが、このハウンドツースも、こちらに仕立てあがりのイメージをなげかけてくる魅力を持っています。
この生地は、仕立てたときに、この毛足としっとりした質感が思っている以上に効いてくるのだと思います。









The Collection  /    2. Overcoating _b0151357_1411973.jpg英国製
「ピュア キャメルヘアー」
 

「ムーアハウス ブルック」の歴史を調べてみると、キャメルヘアーの取り扱いを当初から行っていて、それを特色にしていたと云います。それもあるのか、このミルの100%キャメルヘアーは、極端に上質です。いま最上質といわる現行のカシミアよりよほど柔らかく、軽く、贅沢なタッチがあり、キャメルヘアーといえばポロコートという枠組みを越えた、贅沢な魅力に溢れています。
このキャメルヘアーを初めて手にとった時、私は、大げさと思われるかもしませんが、ある種のショックを受けました。英国生地の奥深さと、その実力。テーラーに備えられているバンチに飽き足らず、自分の足で生地を探し始めたとき、いままでで見たことがない上質な生地がそこかしこに眠っていることに興奮を覚えて、それがやみつきになりました。その当時の興奮を思い起こさせてくれる名品だと思います。

























「ティラー六義」
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by tailorrikughi | 2008-07-16 17:14 | 2. ムーアハウスブルック
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