Column / サー・イーデンとピークドラペルスーツ



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Column |  サー イーデンとピークドラペルスーツ





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或る日、まだ若かった私は、
数枚の写真をもって馴染みのテーラーに出向いた、

それは、銀幕のスターなどではなく、
或る魅力的な姿をした政治家を映したものだった、

私は、その政治家が愛用していた、
ピークドラペルのシングルの三つ揃いに
魅力を感じていたのだ、

その写真をみつめて、
テーラーのお爺さんは、不思議に
複雑な表情をみせた、
「、、サー・イーデン、、、」

お爺さんが呟いたとおり、
その政治家の名は、
サー・アンソニー・イーデン エイヴォン伯爵、
「悲劇」の政治家だった、




b0151357_381366.jpgこのスタイリッシュな政治家は、
絵に描いたような英国保守党のそれの履歴を持っている、

貴族として生まれ、イートン、オクスフォードとすすみ、
チャーチルの「後継者」として外務大臣を3期勤める、
「エリート」なのだ、加えて華やかなスター性に恵まれていた、

人望も厚く、チャーチル引退後、総選挙で圧倒的な勝利の末、
首相の座につく、

誰もが、「大」英「帝国」の首相として合いふさわしい人物と、
認め、嘱望していた、

イーデンの不幸は、50年代半ばに入り、時、すでに、
世界構造が大きく変わろうとしていた時代にあったことで、
加えて、それをいまだ「大」と「帝国」のついたテクストで、
乗り切ろうとしたコトにある、
イーデンにはそのキャリアからも自信があったのだと思う、

優れた人ではあったが、「革新」の人ではなかった、

こうして、イーデンは「スエズ危機」で致命的な躓きをする、


b0151357_382624.jpgスエズ運河の国有化をめぐる、
その後の世界構造を決定していく駆け引きのなかで、
「大」英「帝国」は屈辱的な敗北を蒙る、
それは、「スターリング圏」の屋台骨をゆるがすほどのものだった、

その過程で画策されたイスラエルとの
幼稚な謀議が明るみにさらされるに至って、
輝かしいはずのイーデンの政治生命も、
恥辱の果てに断たれることになる、

その後、英国は急速に影響力を失い、この痛手は
「スエズシンドローム」ともいえるコンプレックスを英国に残す、
サッチャーやブレアの強行路線は、この呪縛の複雑な裏返しにある


もともと健康に問題のあったイーデンは、
激務に追われ、それを悪化させ、理性をも失っていく、
その退任の挨拶には、英国民も複雑な想いを抱いたろう、
ある意味では、郷愁さそう「大英帝国」の矜持を守ろうとした
最後の政治家といえるのだろうか、
ただ、現代では稀な古の優雅なスタイルをもつ姿の良い人だった、




いかにもイギリスらしいジンジャービスケットと、おじいさんが、淹れてくれた紅茶をミルクをいれないで(ジンジャービスケットには、ミルクを入れない方があっていると信じている)、愉しみながら、そんな話をしていた、

窓の外は、夏の残り香も失せて、このところ急速に冷え込んでいて空気も感触が違ってきてる、ハムステッドにはもう落ち葉が目立ちはじめていた、

おじいさんとつくった、ピークドラペルのスーツは、エスクワイアのフェロウズが描くそれと違って、古の英国を匂わせる、少しフィットさせた独特のシルエットだった、

それは、多分、おじいさんのかつての英国への矜持だったのかもしれない、














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copyright 2008 Ryuichi Hanakawa

by tailorrikughi | 2008-11-09 03:19 | ■Column(New)
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